繁殖犬ボランティア体験記(父犬)

ヒトに逢うと「かしこそうな犬ですね」「おとなしそうですね」「きれいな犬ですね」などと言われます。
すると決まって私は「兵庫盲導犬協会のパパわんこなんですよ。ハンサムでしょ」と答えます。
クリスと出会ったのは、神戸市西区押部谷の兵庫盲導犬協会の庭。大きな身体で跳ねながら近づいてきました。
以前飼っていたのはビーグル犬だったので、大型犬と接するのは初めて。実際逢ってみて、不安がよぎりましたが、家族にも意見を聞き、預かることにしました。
2006年10月25日生まれ、オス、ラブラドールレトリバー、毛色はイエロー。クリスの情報と簡単な号令の掛け方を教えていただき、その日は不安いっぱいで帰りました。

帰ってまず水飲みです。洗面器に水を入れて与えると、ザブザブバシャバシャ勢い良く飲み、飲んだらそのまま動きまわり、あたりはベトベト。前のワンコのサークルを慌てて出しましたが大きくて入れない。部屋が狭くて柱にぶつかる。最初は驚くことばかりでした。
(ちなみに今は、そっと水を飲んで、狭い部屋も上手に動けるようになりました。)
家の周囲は公園がいくつかあります。前のワンコが死んでから歩いて出ることが無くなり、公園の梅、桜、花ショウブ、くちなしの花、紅葉など、自然と触れ合い感動することも無い生活でしたが、一変。クリスと1日に何回か散歩に出かけることで、自然と親しみ、季節の移り変わりをいち早く感じる毎日です。
クリスの毛色は、来た頃は真っ白。今はベージュです。クリスの子供達もクリスに似た子は真っ白です。目はクッキリ大きく、手足は長く、31kgと大柄ですが、太らないよう管理しています。
便の躾は出来ているのでとても楽です。ただクリスはお腹の弱い子だったので、最初は少し苦労しました。来てしばらくは、宅急便の荷物を見つけるとかぶり付いていましたが、大人になって落ち着きました。
そして上手に甘えることも覚えました。雷が苦手で「なんで私にピッタリマークしているの?」と思えば、ゴロゴロなりだします。大きな声で吠えることもめったに無いです。

孫達がクリス大好きで、来ると身体に顔をうずめるようにしてくっついています。クリスも嫌がらずにガマン(?)しています。
ある時、幼い孫がクリスにもたれたまま眠りましたが、起きるまでじっと待ってくれました。散歩で小さな子供や犬に逢っても友好的です。大人にもおとなしく撫でてもらっています。
クリスを預かってから、本当にクリス抜きの生活は考えられません。繁殖犬の引退は約7才なので、あと数年の約束ですが、どうしようかと考えてしまう今日この頃です。時々クリスのお仕事で協会に送りにいきますが、クリスがいない間部屋が広々です。散歩のない分ゆっくりできますし、掃除機をかける回数が減りますが、やっぱりクリスはどうしているかとても気になり、協会へ問い合わせたりします。
クリスを預かりとても得をしたこと。自分の孫に逢うようにクリスの子犬たちに産まれてから会いに行けること。
クリスの奥さんにも逢えます。奥さん達は私とは初対面でもとても喜んで歓迎してくれます。
盲導犬サーブを見て、ぜひ盲導犬と関わってみたいと思っていました。犬好きは以前からですが。クリスと出会えてよかったと思っています。
願うのは、40頭余りのクリスの子犬達が元気に賢く成長して、盲導犬になって欲しい。
ヒトに可愛がられ、大事にされ、幸せをヒトに与え、幸せな一生を送って欲しい。
そのお手伝いが少しでもできればうれしいです。

(2013年1月)

大切に育ててくれて
ありがとう